切番線

2021年7月23日

家の近所の、「ホームセンターのもっとちっちゃいみたいな店」で買いました。ついている値札によれば、一本40円でした。

番線とは、工事現場などで足場を結束するときに使うような針金のことです。工事現場で大量に使うような番線は、何十メートルとか100メートルの長さをロールにしたものを使っているらしく、それを切ってひねってあるのが「切番線」だそうです。私は少量をいけばなに使うだけなので、切番線になっていないと持て余します。

私は、これを何かの結束用に買ったのではありません。これ自体を、作品の素材にするつもりで買いました。
買った理由は、

  • 安い
  • 入手が手軽
  • 手で形を変えられる(ペンチなど使うと、さらに形を変えられる)
  • クラフト用ワイヤーよりも、かなり丈夫
  • クラフト用ワイヤーよりも、かなり存在感がある
  • 錆びさせることもできる(錆び鉄というのは、味があって面白い)
  • 頑張れば接着剤で留めることができる

↑こんな感じになります。
草月流のいけばな家は、「鉄」という素材に、比較的大きな親しみと憧れを持っています。しかし、鉄作品は(鉄花器も)、そう簡単に自宅内でできるものではありません。だから、草月のアトリエには、鉄工所があるのですし、町の鉄工所の職人さんに頼んで鉄を作ってもらっている先生も大勢存在します。

しかし、鉄を本当に好きなように作るのは、かなり大変なことです。職人さんと、よほどうまく意思の疎通ができていないと、真の「私だけの鉄作品」はなかなかできません。こういうものなら、スケッチを渡して頼みっぱなしでもいいのですが、1ミリや2ミリの違いが作品像を左右するような創作に取り組もうとしたら、鉄工所で職人さんと二人三脚状態で作るか、いっそ自分が鉄を扱える職人になるか、どちらかしか無いのではないでしょうか。
でも、私にとっては、どちらも現実的な選択肢ではありません。じゃあ、何か方法は無いのか、と考えて、今のところ私のできる精一杯の「鉄」がこれなんです。

この切番線なら、手で簡単に曲げられます。

自分の納得のいく線が出るまで、いくらでもこだわることができます。しかも、実際の作業は手軽にもかかわらず、見た目には「お手軽感」がそれほど現れてきません。

しかし、所詮針金なので、形を作ることに限界はあります。
いけばなに導入するときにネックになるのは、あまり大きなものを作ると自分の重みで少しずつつぶれてくることと、軽いものしか乗せられないことです。クラフト用のワイヤーよりは相当しっかりしているとは言え、大きな枝などを乗せることはできません(たくさんの番線を太く束ねたら、結構大丈夫だとは思います)。

切番線は、非常にさびやすいです。売っている段階で、うっすらさびていることも無いではありません。
切番線というものは、本来屋外で使って使い終われば処分するものなので、錆びが出ようが出まいがどうでもいいようなものなんです。

部屋に置いておくだけで、切番線はじわじわ錆びていきます。
いけばなに利用するときに、この錆びが邪魔になることはあまりありません。
上にも書いたように、錆び鉄というのは、なかなか魅力のあるマテリアルです。(私は、金属チェーンを何年もかけて錆びさせたものを花展に使ったことがあります)錆色だと困るような作品でなければ、むしろ「いい味」になることが多いと思います。

錆で困ったことになるのは、作成中に手や服、部屋の中が錆びだらけになること、展示する場合は展示場所に錆が落ちるかもしれないことなどです。
実際に錆び鉄を扱った人間からすると、散った錆で、なにやら家中がザリザリになるのが非常に困りました。後から気づきましたが、いじっている間は空気中にも錆が散っていると思うので、吸い込まないためにマスクをして作業した方が良いと思います。

私は、それほど頻繁に切番線を使っている自覚はなかったのですが、この記事を書くために振り返ってみたら、結構な頻度で花展に使用していることがわかりました⇒2008年 2015年 2016年 2011年
……自分が思っていたよりも、私は切番線が好きみたいです。