黄色脚付花器(草月流花器)

2020年4月5日

※花器カテゴリは、管理人が自分の所有花器を管理するために作成しているものです。(何らかの方法で管理しないと、持っているのを忘れることがあるので)


母のお友達の方で、「若い頃に草月をやってた」方から頂戴しました。これは、昔から草月の売店で売っていた花器で、流内の人間にはおなじみのものです。
この花器は、確か、黄色のほかに、黒と赤もあったと思います。歴史のあるお稽古場だと、三色そろっている場合が多いです。初心者から使えるタイプの花器で、お値段もお安い方のはずです。

この器には、二年くらい前に、ぶったまげるようなことがありました。
ある日、ヤフーオークションをつらつらと見ていたら、この器が出品されていました。なんと、「12,000円よりスタート」でした。しかも、一人入札しているやつがいました。私は椅子から落っこちそうになり、「すごく良く似てるけど、私の知っている草月の花器とは別のものだろう」と思い込もうとしました。
だって、12,000円の価値は、申し訳ないけどこの花器には無いですよ。私、いくらなら買うかなあ……今となっては、1,000円くらいしか出したくないなあ。古臭い花器だもん。

そんなわけで、「うちにあるのと同じ花器のわけがない」と思ったんですけど、説明を読めば読むほど、確実に草月流の、上の画像の花器であることが分かってきました。
出品者は、いけばなにも、草月にも詳しくないです、と前置きされていて、「箱書きが非常に立派なので、このくらいの価値だろうと思い、12,000円よりスタートです」と書かれていました。

しかしね、私、箱もよく知ってますけど(草月の皆さん、みんな知ってますけど)、ボール紙に、蒼風先生の書で「草月」と書いた紙が貼ってあるだけなんですよね。蒼風先生の字って、やたら迫力があるので、素人目には「ご大層」に見えるのかもしれませんけど、でも、「印刷した紙を貼っ付け」たものなので、あれを指して「箱書きが立派」とする神経は、ちょっと不思議です。

私は、このことで、あまりにもびっくりしたので、次の日稽古場で、
「昨日、この花器がヤフオクで12,000円でしたよ!」
と姉弟子たちに言ったところ、全員が
「………え?」
と絶句し、最終的には、口をそろえて
「12,000円ももったいない……うちにあるのをあげるのに!」
と言いましたねえ。草月流花器をヤフオクで買うときには、うちのサイトとかで値段をリサーチされるとよろしいです。

私は、この花器は、すでに「古臭い」領域に入った花器だと思っています。昭和30~40年くらいにモダンだった花器は、意外にそれより前の時代の花器よりも「古臭く」見えるときがあります。
このブログで何回か書いていますが、花器の古臭さは、足に現れることが多いです。

……ここまでV字型じゃない足の方が、現在の住宅のリビングや玄関には使い易いです。

あと、花を生ける口の、この四角さ加減とか。いっそ、もっと無機的に、直線的に四角の方が現代的です。

しかし、長年草月と共に歩んできた花器ではあるので、草月人にはこの花器が手に馴染み、遊び甲斐があるという人もいるはずです。その証拠に、草月人は、この花器を色々変則的に使う術を心得ています。
多いのが、立てて使っちゃおうというパターンです。

しかし、私はあまり立てるのは好きじゃありません。だって、後ろがこんな風なんだもん。

また草月人は、この花器の、裏側の小さな部分まで熟知していて、足にこのような穴が開いてることを、大抵の人が知っています。

この穴の存在を、知ってどうするのかと言えば……

↑こういう風に、何かの引っ掛け所にしたりします。

 この花器の裏には、このような印が入っています。

これは、「勅使河原蒼風デザイン」のマークです。