フォックスフェイスの種を取って育てる

2020年3月17日

フォックスフェイスの種をまく

フォックスフェイス 種の取り方

これ、フォックスフェイスの実です。一度、この種を取って育てたことがあります。

この記事では、フォックスフェイスの実からの種の取り方や、栽培の様子をレポートしようと思います。

フォックスフェイスの種は、簡単に芽が出る

フォックスフェイスという、とても個性的な実を付ける植物があります。切花でも、鉢物でも出回り、見た目のインパクトが強いので、店舗ディスプレイにもよく使われます。(切り花の画像はこちらの記事にあります→自分が使った花材事典:フォックスフェイス

実は、こんな感じです。

フォックスフェイスの実

パッと見て、「レモン?」って言う人がいます。しかし、柑橘系ですらなくて、なんとナスの仲間です。和名を、「カナリヤナス」と言います。

フォックスフェイス=カナリヤナスは、このような、鮮やかな色の大きい実をたくさん付けるので、色も形も題材として面白く、いけばな人には愛されてきた花材です。秋の展覧会シーズンに出回ることもあり、いけばなの大型作品に使われているのをよく見かけます。
上の画像は、実だけを切ったものですが、茎も太くて、存在感があります。

私が、以前居候していたお宅では、鉢にフォックスフェイスの種をまいて育てていました。私は、それがいけばな花材のフォックスフェイスから種を取ってまいたものだと知ったときには驚き、「自分もいつかやってみよう」と思いました。
フォックスフェイスを育てるなんて難しいのかと思ったら、そのお宅では放りっぱなしにしていたのに勝手に大きくなっていましたし(最後には、霜に当たって枯れました……)、種も適当にまいたらウジャウジャ出てきたと聞いたものですから、マンションを買って自分のベランダができたときに、すごく軽い気持ちで自分も試してみたのです。

フォックスフェイスの種の取り方(かなりいい加減です)

私はある日、例によって、稽古場のゴミ箱の中から、誰かが捨てたフォックスフェイスの実をゲットしました。「種取り用」としてゲットしたのです。
そして、ある天気の良い日に、プランターと土を用意し、フォックスフェイスの実を鋏で切り開きました。

フォックスフェイス 種の取り方

実の中は、白くてふかふかで、食用のなすとほぼ一緒です。種も、ナスに種ができちゃってるのと同じ感じで入っていました。

そのときの画像を残していなかったのが残念なんですけど、なんか、見るからに、まだ未熟っぽい種だったんですよ。白っぽくて、軟らかくて、これは発芽しないかな、と思うような種でした。
その種を見たら、私は一気にテンション下がりまして、半分「どうでもいいや」の気分になり、実から種を塊のまま抉り出し、そのまま土の中にざくっと埋めました。今思い出しても、あまりにもいい加減な種の取り方でした。

しかし、「未熟っぽい」種は、立派に発芽能力を持っていました。春になって、私が忘れた頃に、恐ろしい発芽率で芽を出し始めたのです。

追記:「熟した種」の画像です

下は、実際の種まきに使ったフォックスフェイスではなく、のちにいけばなに使ったフォックスフェイスを切り開いてみたときの画像です。

フォックスフェイス 種

↑この画像のフォックスフェイスの種は、黒く熟しています。でも、ここまでしっかりした種にならなくても、うちではバンバン発芽しました。
フォックスフェイスの実を切ってみて、種がまだ白かったとしても、種を取って育ててみる価値は十分にあると思います。

フォックスフェイスの芽が、ウジャウジャと出てきた

フォックスフェイスの発芽率は、甘く見てはいけません。私が、種を団子状にざくっと埋めたために、一点からウジャウジャに芽が出てきて、それはもうビジュアル的にも恐ろしい程でした。
芽の出方からして、
「こいつ、植物としての戦闘能力が高いな」
と分かったので、私は遠慮せずにどんどん間引きし、3本くらいを残し、そのうち1本だけを大型の鉢に移して、「1本だけを優遇する作戦」にしました(小さなプランターに残した子たちは「保険」みたいなものです)。

鉢を大きくして、土をたくさん抱かせたら、フォックスフェイスはもう喜んでしまって、超スピードで丈を伸ばし、最終的に私の身長と変わらないレベルまで行きました。
しかも、茎も葉っぱも大きいんです。茎の太さは、鉢物と切花を見て知っていましたが、葉っぱがあんなに大きいとは知りませんでした。

大きな葉っぱの画像も残しておけばよかったんですけど、ちゃんとしたものが無いので、「別の木を撮った写真の、両脇に写りこんでいる画像」で勘弁してください。

フォックスフェイスの葉

↑真ん中に写っているのは、ニームの木です。その両脇にある、やたら大きい葉っぱの植物がフォックスフェイスです。手前にあるのが、小プランターに植えた小さいフォックスフェイス、奥に見えるのが、大きな鉢に移して巨大になっていったフォックスフェイスです。

画像の様子から、なんとなくお分かりいただけると思いますが、大きいほうのフォックスの葉の大きさは、人間の手のひらよりよっぽど大きく、私の手の2倍以上はあったと思います。

フォックスフェイスが開花した!

大きいほうのフォックスは、これだけ葉っぱも茂り、茎も太くどっしりとし、植物として充実している様子が見て取れたので、私は「花をさかせてくれるのではないか」という期待を持っていました。
私の実家では、プランターでナスを育てていたことがあります。ナスって、いくらでも花が付いて、いくらでも実るものだというのを、私は目の当たりにしていたので、「フォックスフェイスも、ナスの仲間ならば、開花はそんなに難しくあるまい」と思っていたのです。

果たして、私はある夏の日、フォックスフェイスにつぼみがついているのを見つけました。

フォックスフェイスのつぼみ

おお、ナスの花だ! あの、紫色の花と同じようなのが咲くのかな、と思ったら……

フォックスフェイスの花

ナスより青味が強くて、上品な花だった!

この花を拝んだ時点で、私は完全に満足し、「大成功だった」と思いました。
結実は、そんなに期待を持ちませんでした。実が付いたとしても、売っているフォックスフェイスのような、立派な実になるわけはないと思い、「貧相な実なら付くのかもしれない」と思ってはいましたが、鑑賞価値があるほどのものはできないだろうと諦めていました。

結果的には、実は一つも付きませんでした。花がらが落ちてしばらくすると、残った部分が花首から落ちてしまい、一つも「実になりかけ」の段階にさえ行き着きませんでした。

しかし、青い花の開花期は、意外に長く、なんだか夏中咲いていたような記憶があります。
マンションの外から、自分の家のベランダを見ると、ちょっと異様にさえ見える大きな葉っぱが顔を出し、そこに上品な青い色の花が付いているんだと思ったら、それだけでも十分満足でした。

また気が向くことがあったら、フォックスフェイスの実生栽培は、再びやってみようと思うこともあるかもしれません。