自分が使った花材事典:バラ(レインボー)

ずっと前から「嫌いです」と公言している花です。

嫌いな理由は、この色の強引さ、不自然さ、派手派手しさ。(もうちょっと色合いを変えたら、もう少し好きになれるような……)

強引さや不自然さなんて、草月さんのお得意分野じゃないですかね、と言われるような気もしますが、この強引さは、私は好かんのです。
実を言うとレインボーは、いけばなよりも、花束にするときの方が「扱いに困るなあ」と思います。この色は、ほかの花との馴染みを拒絶してきます。なじまないので、ほかの花をほとんど入れられません。なんと、カスミソウでさえ合いません。このいやらしさを緩和するための何かを投入しにくいのです。結局、レインボー単体が一番マシです。

このバラのいる場所は、イロモノというか、キワモノのポジションだと思っています。世の中にはこの花を見て「キレイ!」という人もいますが、そういう対象じゃない気がします。

もう一つきらいなところは、花の開きがきれいじゃないことです。染料を吸わせているせいじゃないのかと、私は思います。
ただ、現物を目の前にすると、好奇心はざわめきます。一体どういう構造なんですかと。

花弁以外のあちこちに、染料は顔を出しています。たとえば、葉の裏。

↑半分が黄色く、半分がピンク。

↑半分がピンクで、半分が青。

このバラの不思議なところは、単色に染めるのではなく、複数の色が混在すること。
茎の断面を見てみますと……

はっきりと、茎がピンク・黄色・青で三分割されています。どうやったらこうなるんだ? 染料の「吸わせ方」に秘密があるんでしょうね。私には、何か専用システムがあるんじゃないかと推測するくらいのことしかできません。
青の染料を吸い上げた導管は青くなる、ということなんでしょう。ピンクを吸い上げればピンクに、黄色を吸い上げれば黄色になる、と。

でも、下の左側の花弁なんかはどういうこと?

これ、黄色と青がまだらに混ざってない?
でもまあいいや。これ以上考えるのはやめよう。

吸わせ着色の花は、切り口から染料が出てくるものです。じゃあレインボーは何色が出てくるのかというと……

はい、何も出てきません。花瓶の色は、透明なままです。どうもこうも、何から何まで「普通の吸わせ」とは違うようです。