自分が使った花材事典:ケムリの木

2018年11月9日

この植物に「煙の木」と名づけた人に、ぜひとも「うまい!」と言ってやりたい。

ホワホワなところがいいですね~。よくこんな植物が存在してくれたと思います。
一回でも煙の木を買って生けたことがある人なら分かると思いますが、上の画像のケムリは、随分短く切り詰めています。
長いままのものを残さなかったので、元の大きさを出せないのですが……「刈り込んじゃった後」の姿でよろしければご覧ください。
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ケムリは、太い枝から、ホワホワの花を咲かせる細い枝がたくさん出るような形状でして、上の短いケムリは、ほとんど一本の枝から切り出したものです。

花に近づいてみると、こんな感じです。

このケムリは、緑色がとてもきれいでした。安いケムリを買うと、こんなにはきれいじゃない場合が多いです。

品種によるのか、個体差なのか分かりませんが、もっと赤い花のものもあります。
ケムリは、意外に庭木にも使われていて、真っ赤なケムリが木全体に咲いている姿などを、住宅地の中でも見かけることがよくあります。

子どもの頃は、私はケムリに大層憧れて、「死ぬまでに一回は生けたい」などと思っていました。あの頃は、ケムリなんぞ気軽に稽古花に入ってきたりしませんでしたからね。ケムリを生けられる人なんて、結構偉い先生たちだったはずだと思いますよ。

ケムリの、きれいなホワホワは、残念ながら一番美しい時期が短いです。水揚げをおろそかにすると、一日で劣化してきます。

ホワホワの部分が劣化すると、綿埃状態になってくるんですよね~。

下の画像は、「一部に綿埃が発生してきた」状態です。

紺色の○で囲んであるところが、「綿埃化」の状態です。
この、「綿埃状態」が、わからない人というのがいるので、上の画像を見ても「えー、これでもうダメなんですか?」と思う人は要注意です。

しかし、「分からない人=ダメな人」とも、一概には言えません。
ぶっちゃけますと、「半綿埃状態」で、堂々と売っているケムリはたくさんあるんです。(そういうのを、私は「きれいじゃないケムリ」と呼んでいます)てゆーか、昔はほとんど「半綿埃」くらいで売っていましたね。だから、「半綿埃」には、ちゃんと商品価値が有るって言えば有るんです。

「半綿埃」どころか、「完全綿埃」になったものも、結構な高いお値段で売っています。「完全綿埃」は、商品名としては、「ケムリの木のドライフラワー」というものとして出回っています。(「完全綿埃」とか言ったら、営業妨害になりそうです)
私の目から見ると、「ケムリをドライにして何がきれいなんだろう」と思いますが、ケムリは、高級花材だった昔には、ドライにして使いまわしたりしたので、結構「綿埃」になっても許される歴史があるんですよね~。

なので、「半綿埃」を、「きれいでしょ?」と言って飾るのは、有りは有りなんですよ。私はやらないけど。

ここまで来ると、個人の好みの問題に近づいてくるので、「きれいだ」と思うなら、おのれの感性を信じて飾っていいのだと思います。
しかし、花屋さんなら、せめて下の画像の「綿埃じゃない方」と「綿埃な方」の見分けはつかないといかんと思います。

↑もちろん、ピンクの○が「綿埃じゃない方」、紺色の○が「綿埃な方」です。

綿埃はねー。見えるようになると一目瞭然に見えるんですよ。
下の画像の、真ん中に一ヶ所「綿埃」があるの、分かります?

いけばなの先生とか、フラワーアレンジの世界の人とかは、最悪「綿埃」が見えなくてもギリギリセーフで済むと思うんですけど………展覧会などで「半綿埃」のケムリの前で、
「新鮮なケムリはやっぱりきれいですね」
とか言ってたら、それはちょっとヤバいのかな、とも思いますね。