自分が使った花材事典:黄房水仙

2018年9月29日

今くらいの時期の水仙は、安価でいいですね。安いので、たっぷり使えます。

↓これは、短く切り詰めて飾ってある画像ですが……

水仙は、花屋の店頭ではすらっとした、丈の長いままで売っています。「水仙らしく飾る」という意味では、ある程度の丈を残したほうが「らしく」はあります。


花と葉っぱを、簡単に分けられる

この水仙は、葉っぱが無いじゃないか……とお気づきの方は、水仙を何度か飾ったことがある方でしょうね。普通は、水仙は、花と葉がセットで売ってます(一部の匂い水仙は、花のみのことがあります)。ご存知の人には当たり前ですが、水仙は、花茎から葉っぱが出ているのではありません。真ん中の花茎の周りに、別途葉っぱが出ています。だから、生産者がその気になれば、「花と葉を別出荷」とかできちゃいます。意味無いからやらないですけど。

もちろん、私の買った水仙にも、葉っぱは付いてまして、必要あって外してしまっただけです。

水仙の葉っぱに動きをつける

↓葉っぱのみの画像です。

水仙にしては、やけに葉っぱに動きがあるでしょ? 動きつけちゃったもんで……。

↓水仙の葉っぱは、土に生えているときは、この程度のまっすぐ具合です。

これを、セロハンで巻いて出荷販売しているうちに、更にお行儀良くまっすぐになります。
で、そのままじゃあ色気が無いってんで、いけばな屋は水仙の葉っぱに動きとか、表情を付けるんです。

↓これ、何も手を加えていない水仙の葉です。

根元近くに、生え方でカーブが付いているだけです(このカーブすら無い直線的な葉もあります)。

それを、手でしごきます。これだけで、葉っぱの印象が変わります。

手で、きゅーっとしごくだけ。誰にでもできます。力の入れようは、3枚くらいもきゅーっとやれば何となく分かります。あまり最初から強い力をいれず、弱い力から試してください。これ、「奥義」みたいなレベルのものではありません。初心者がすぐできる技です。

力の入れ方や、葉っぱの厚さ・固さにより、表情はいくらか作り分けることができます。

↓ゆるいカーブを作ってみました。

↓こちらは、一回転ひねり。くるっと1回まわっています。

そうやって、動きなり表情なりつけた葉をたくさん使うと、まっすぐにピンピンしていた水仙の葉では作れなかったいけばなも作れます。

全部の葉っぱをしごいてみましたので、躍らせちゃってみましょう。

花よりも、むしろ葉っぱの動きメインの作になりました。
もうちょっと踊れないかな……。

ここまで躍らせると、一輪挿しにおとなしく収まってもらいたい場合にはかえって扱い難くなります。
「おとなしく、でもちょっと色気がほしい」と思ったら(ワガママなオーダーだぜ)、葉先だけちょっとしごいてみてください。結構、小さな花瓶の中でも表情が変わります。

水仙はハカマをはいている

ホントなら、「自分で使った花材事典」で水仙をアップするときには、ハカマの記事でも書こうと思っていたんですけど、今回はハカマを取ってしまったもので、またの機会にさせていただきます。

いけばなやってない方は、「水仙のハカマ」って分からないですよね。
袴はいてるんですよ。水仙って。根元のところに、花茎と葉っぱを束ねる輪っかがはまっていまして、いわば、水仙が自前で輪ゴムをかけてるみたいなことをやってるんです。
この袴は、人がかけるものではなく、もとからあるもので、お庭に水仙がある方は、ちょっと見に行ってみれば分かると思います。
本サイトのこちらのページ⇒アクリル剣山 の一番下に、袴がかすかに分かる画像があります(見難くてごめんなさい)。水仙の根元に、ちょっと白い部分があるのが「袴」です。(ついでに、葉っぱのまっすぐ加減も見てみてください)

この袴を、いけばな家は、葉組みを整えるのに利用します。
嫌がる水仙をなだめすかし、「いいじゃないか、いいじゃないか」とか言いながら袴を脱がせるという、まったくもって破廉恥極まりない技なのであります。