五重筒(赤・黒)

2022年10月11日

※花器カテゴリは、管理人が自分の所有花器を管理するために作成しているものです。(何らかの方法で管理しないと、持っているのを忘れることがあるので)


蒼風時代からの草月流の先生なら、絶対に知っている花器です。

「五重筒」は輪島塗

五重筒と書いた木箱が二つ。

草月流の花器で、木箱入りなんて、最近はほぼ無いと思います。木箱あると、箱自体が邪魔だったりしますし。
でもこの花器は、「やっぱ木箱必要っしょ」という花器でした。草月人としては、ちょっとした財産になる花器でした。

木箱を開けますと……

おー、紙に包まってる。財産になる花器は違いますなあ。
この紙を開いてみますと、

「輪島漆器」って書いてある。輪島塗は高いぞ!

五重筒は、結構な高額商品

五重筒は、文字通り「高いぞ!」な花器でした。多分、商品のコンセプトとして、「きちんとした場面で使える、塗りの良い器を一そろいだけ持っておこうと思うならコレ。コレだけ持っとけ!」というものだったんだろうと推測します。箱入り・五個揃いの内容(五個あるから五重筒なのです)からも、
「高いけど、大事に大事にいつまでも使ってね。そうすれば、出したお金の分の働きは絶対にしてくれるから」
という意図が読み取れます。

この器は、40年だか50年くらいも前の発売だと思うのですが、その当時ン万円の代物でした。相当本格的にやっている先生か、そうとうお金が自由になる先生でないと買えなかった器です。

いくらで発売されたものか、私は知りません。自分でお金を出したことが無いからです。じゃあこの2箱はどこから来たのかと言えば、亡くなった先輩や、業界を卒業なさった先輩からいただいたものでして、実を言うと、一時は4箱持っていました。
私ごときのところに4セットも集まるということは、誰にとっても、この器は「捨てられない・その辺のリサイクル屋には出したくない・花器としてちゃんと扱ってくれない人には託したくない」と思わせる花器だということなのです。くださった方全員、思い切って買ったものに違いないし、ほかの器よりも圧倒的にキレイに手入れして使った花器に違いないのです。

私の家に集まった4箱の内訳は、黒3箱、赤1箱でした。今は、私はそのうちの黒1赤1を手元に残し、あとの黒2箱は、草月内の人に大きな恩を受けたときにお礼の品にさせていただきました。今も、行った先で大事にされていると思います。

木箱の中身はコレ!

では木箱の中身を出しましょう。
まずは黒。

そして、赤。

二色とも金箔で模様が入っていますが、模様の入り方が黒と赤で変えてあります。

見てわかるように、この器は、かなり「和」を意識した場面、かなりフォーマルな場面でも使えます。
外国人の方にお見せするときにも喜んでもらえそうです。
人前でデモンストレーションするときにも、撮影用にも使えそうです。正式な感じでやってまいりました!という態度がふさわしいところにも、臆せずに持って行けそうです。

単体の器に注目

こ器を、単体で見てみますと、

厚みのある、筒型の鉢とでも言いましょうか。花器よりも、和食器のように見える人もいそうです。実際に、私の大先輩の一人は、この器を「買ってから何年間か、おせちの器にしていた」と言っていました。

↑直径は、こんな感じ。一つでも、何個か組んでも使いやすいです。

底の部分は、下のようになっています。

「蒼」の文字が入っています。蒼風先生のデザインなんでしょう。

「五重筒」は、組み合わせで力を発揮する

5個セットの五重筒は、赤・黒の二色を持っていると、10個セットと考えることもできます。
同じシリーズのものが10個あると、いろいろと組み合わせて使う楽しさがあります。

例えば、
一つの色の中から、好きな器を何個か使って生ける、
二色の中から、好きな器を何個か使って生ける、
赤も黒も全部、つまり10個の器を盛大に並べて生ける、
器どうしを何個か積み重ねて生ける
器を積み重ねたものをオブジェ的なものとして作品に取り入れる

↑などの使い方を、好きなだけ考え出して使えます。

器を積み重ねる例を、いくつか画像で出してみます。

↑二段重ねと、三段重ね。上の項の「底面の画像」を見ていただくとわかるように、この器は底がはまって積み重ねられるような構造になっています。

↑違う色で、二段重ね。

↑五個ピラミッド積み。6個使えば円錐形にもできます。

↑赤の塔と黒の塔。ここまで積み上げると、水を入れて花を生けるのにはちょっと不安定です。てっぺんに花を生けるのであれば、見えないところでしっかり固定する方法を考えます。
花は挿さずに、このまま「和のおめでたい感じのオブジェ」として作品に取り入れても良いと思います。