自分が使った花材事典:ニューサイラン
いけばなでは、おなじみすぎる花材です。考えたら、こんなに愛されている葉物も珍しいかもしれません。初心者のお稽古花の定番花材でありながら、大御所の大作にも使われます。
あまりにも、「初級の花材」の色が付いているものって、こっちの経験値が上がってくると「つまんない」と思えてきたりするのですが、ニューサイには、そうさせない魅力があるのでしょう。
スラッとした線を生かしてもいいし、面としても扱えます。
葉の裏と表は、やや色が違いますので、裏表の組み合わせで変化を付けることもできます。
私は、この花材が、和風にも、洋風にも仕立てられるところが便利で頼りになると思っています。葉物というのはですね~、「和」か「洋」か、はっきりカラーが分かれるものが意外に多くて、お店に納品するときに、色々制限されることがあるんですよ。
広く愛される花材というのは、結局、可能性が大きい花材なのだということかもしれません。
私、ニューサイについては、昔から面白いと思っていることがあって、「ニューサイラン」は、漢字では「新西蘭」って書くんですけど、要するにニュージーランド産だから、こういう名前になったらしいんですが、「新」だけnew(=ニュー)に変換して、「じーらんど」の部分(=西蘭)は、「さいらん」と読ませるのが、どうも不思議でたまりません。
誰なんだ? 名づけたやつは。どっちかに統一しようとする思想は無かったのか、と聞いてみたいです。こんな名前の付け方、世界的にも希少だと思うんですが。
まあ、名前のことは、花を生ける上ではどうでもいいことです。
生ける上での大きな特徴は、色々加工して使える花材だということですね。これ、外せない情報です。
まあ、一番単純な加工としては、こんな風に折ってみたり……
上の画像は、一本だけ折っていますが、集団のニューサイを折って使うと、パワーが大きくなって全然違う顔が出てきたりもします。
下のような、くるっとひねりを入れる方法とか、わりとメジャーです。sei先生の教室で、「おせちのこんにゃく方式」と言われてるやつですな。
作り方は、それこそ「おせちのこんにゃく方式」で、葉っぱの真ん中に切れ目をいれ、くるっと1回くぐらせているだけです。
葉っぱを丸めて使うこともよくあります(曲げる・折るというのは、どの葉物の加工でもメジャーですけど)。
ニューサイを、一枚まんま丸めてもいいのですが、葉の真ん中に固い芯の部分があるので、私は葉っぱを真ん中から裂き、芯の固いところを分断してしまうことが多いです。
要するに、こんな風に裂いて……
くるくるっと手で癖付けします。葉先だけに癖を付けたければ、葉先だけ丸めればいいし……
もっと下の方まで癖を付けたければ、もっと下まで丸めていきます。
下の方までくるくるっとやっただけでも、これくらいの癖が付きます。
加工前には無かった、豊かな曲線と幅ができました。
上のような癖付けを、もっと徹底的にやることもできます。
くるくるっと丸めたところを、クリップで留めまして……
このまま一晩置き……
翌日、クリップを外してみると、こんな縦ロール状態になってます。
素人の方には、このレベルの加工でも、同じ植物には見えない場合があるみたいですよ。こういう、クルクルな葉っぱが、南の国とかにはあるのかなあと思って見る人、いますからね。(言うと、あーホントだね、って気が付きますけど)
もちろん、何の加工もせずに、そのままのニューサイの姿も美しいです。
まるで日本刀みたいですね。
しかし、そのままの姿がどこにも見当たらないほどに加工してしまうのも、いけばなの面白さです。
あ、あの。世の中には、加工自体を「イヤ」という人がいて、「余計な手を加えるな」「植物そのものの美しさを軽んずるな」という声もあるんですけど、私からすると、「どっちが良いか」というものではなく、「結果、良いいけばなになったかどうか」がすべてだと思います。
空振りした加工が叩かれるのは、当然のことです。しかしそれは、「加工」が悪いわけじゃない。「加工に失敗した、下手な生け手」が悪いだけです。
人のイマジネーションが羽ばたくときに、「自然のままじゃない植物」が、大きな力をかしてくれることがあって、それ自体を否定されたら、私はちょっと表へ出て行って戦ってもいいです。……相手になるよ。簡単に勝てると思うなよなぁ。
あ、ちょっと脱線しましたね。
もう一度、「元の姿がどこにも見当たらないほどの加工」の話に戻ります。
ニューサイの原型どこにもないっしょという加工を、一例お目にかけましょう。
ニューサイを、どんどん裂いていくという、単純な方法なんですけどね……。
もっともっと裂いて……
どんどん、どんどん裂いて……
ベアグラスと間違うくらいまで裂いて……
まだまだ裂いていこう、さあもっと行こう! と、思ったんですけど、ここでギブアップさせてください。
いや~、時間と手間がかかるので、ご勘弁を。作品のためなら、手間でもできるんですけど、ブログ記事のためだとそこまで頑張れません。
でも、これでも知らない人は、まさかこのベアグラスみたいなやつが、一番上の画像と同じ葉っぱだとは思わないでしょう。(いけばな人は、知っているので全員「ニューサイだな」って分かりますが)
本当は、どこまで裂きたかったかというと、糸みたいなレベルになるまでやっちゃいたかったんです。
糸みたいなというのは、すでにその前触れが上の画像にも現れているんですが、もうちょっと見やすい画像を出してみましょうか。
裂いた先の方で、繊維だけになったほそーい部分があります。
繊維だけ取り出してみようかな。
↓要するに、こういうことです。
すべてを、ここまで細くしてしまうと、モサモサのフワフワな物体になります。
ここまでやると、元のニューサイが持っていた魅力とは、全然別の魅力と可能性を持った花材が生まれます。
繊維状になると、簡単に乾き、ドライ素材として水から離しても使えるようになります。
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