花の「転入」
いけばなの世界では、「よその流から移ってくる人」というのが結構多いです。
流を移る理由は、
「こっちの流の方が面白そうだ」
というのもありますが、一番多いのは、
「前の教室に通えなくなり(引越しとか、先生が教室を閉めたとか、会社の華道部に入っていたが退職したとか、色々ある)、ほかに通えるところが無いか探したところ、別の流だけど近くて月謝も安いところがあったので移ってきました」
みたいな、超現実的なことです。
なので、池坊の免状も、草月の免状も、未生流の免状も持ってる、みたいな人は思いのほかたくさんいるんです。
いけばなは、たとえ草月でそこそこの免状を持っていたとしても、池坊に移ったら、一から勉強するのが普通です。
流を移れば「中堅」でも「初心者」に逆戻りです。もちろん、花の扱いを知っているので(花の向きを知っているだけで、大違いです)、ホンモノの初心者と比べると、「びっくるすほど上手い初心者」ではあると思います。
これは、不合理なことではなく、私は30年も草月でいけばなをやってますけど、池坊であれ、古流であれ、突然「中堅になれ」と言われてもできないと思います。やはり、「初心者」からやらせていただかないと、結局基礎のできていないやつになってしまいます。
ということはつまり、いけばなの場合、理念も技術も単純にスライドできないものを持っているわけです。私が池坊に入ったら、かきつばたとか、リンドウの矯め方を猛特訓せねばならないと思います。(私は密かに、草月でリンドウを矯められる先生は1人も居ないと思っています)楔も、構造から教わらないと、何から手を付けるのかすら分かりません。そんなやつに、「中堅の免状から始めればいいよ、あんた経験者なんだから」とは言えるわけがありません。
しかし、「はな」ではなく、「フラワー」の世界は、とても簡単に所属団体を変えられることが多いです。特に、プリザーブドの世界は、大抵「編入OK」なんです。編入OKの団体の方が普通だと思います。よそでディプロマを取った人を、簡単に「講師」として迎えてくれます。(編入試験とか、特別講座を受ければ迎え入れるよ、という方法がスタンダード)
それができるということは、基礎でやることは、どこのスクールでも同じだ、ということをバッチリあらわしています。
そりゃそうですよね。プリザーブドの扱いが、スクールによって大きく異なるとしたら、その方が驚きです。
要するに、「編入を受け入れないのは、あまりにも不誠実」だと思うからそうなったんでしょう。販売に耐える商品を作れるスキルのあるような人まで、
「はい、花の首からカットしましょう。花弁を傷つけないでね~」
なんて授業に入れられないですもん。
編入OKな花と、編入ほとんど不可の花は、どっちがいいということではないのだと思います。ただ、「いけばなもフラワーも、究極的には同じさ」と思っている私が、一番「成り立ちの違い」を感じるところなんです。私は草月を長くやってしまったので、「単純にスライドできない」ことを好ましいと思いますが、もしもプリザを一生懸命やっていたら、「基礎さえ固めれば、いくらでも渡り歩いていける」ことを心強く思ったかもしれません。
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