自分が使った花材事典:ヨツドメ

2018年9月10日

※なぜか、途中からミステリネタと吸血鬼ネタが入ってきますが、花材自体がその理由を持っているのだとお思いになって許してください

花材名:ヨツドメ

ガマズミの仲間です。ヨシドメとか、ヨードメとか、かなり色んな呼び名があるとのことですが、私は「ヨツドメ」という名しか聞いたことがありませんし、「ヨツドメ」で伝わらなかったこともありません。
でも、今Yahoo!で「ガマズミ ヨツドメ」で検索してみたら、「ガマズミ ヨシドメではありませんか?」というYahoo!ツッコミが入りました。「ヨシドメ」の方が一般的なのかしら……。


ヨツドメの赤い実

特徴は、やはり赤い実ですね。これだけで、秋の実ものの楽しさ、美しさを表現できます。
今回の品物は、実付きがよくて、嬉しかったです。実付きの悪い枝モノって、それだでけがっかりですよね。

こんな美しい赤です。

ヨツドメの知名度は激低

このような、目立ついけばな花材なので、私はヨツドメって、結構一般にもポピュラーな樹木なのだと思っていました。しかし、大人になってから、ある日気が付いたんですけど、ヨツドメの認知度って、びっくりするくらい低いのです。同じ「秋の赤い実」である、ナナカマドの足元にも及びません。

私は、10歳からいけばな人になっちゃってるので、子供の頃からヨツドメは「よく知ってるやつ」でしたから、まさか世間にこれほど知られていないとは思っていませんでした。
大体が、「ヨツドメ」という名前を、植物の名だと気付かない人が多いのです。地名だと勘違いするケースが、ものすごく多いんですよ。私からすると、フシギでしょうがないことです(でも、千葉県佐倉市四留、とかいう地名ありそう)。

ヨツドメを生けられるのは嬉しいけど……

大抵のいけばな人は、稽古場でヨツドメに遭遇すると、「あらキレイ」と嬉しそうな顔をします。

しかし、おなごというものは、シビアな現実を見つめているものであります。
ヨツドメは、「見て嬉しい」けど、「生けて嬉しい」とは限りません。
こいつを生けると、掃除が大変なんです。

上の画像でわかってもらえるといいんですが、ヨツドメの実は、サンキライのような、固い実ではないんです。葡萄みたいな、軟らかい「プチプチ系」の実なんです。こいつがぽろぽろ落ちて潰れると、赤い跡がそこら中に付きますし、いけてる最中に手が汚れますし、その手で服に触ると服が汚れます。
この汚れ方が、なかなかやっかいです。特に、白い壁紙の壁に、うっかりもたれかけるように置いたら絶対にダメです。壁紙によっては、拭いても赤いシミが取れません。

上の画像を撮っているときに、うっかり壁に立てかけたら、さっそくこんなことに。

でも、この壁はツルツルなので(壁っていうか引き戸なので)、拭けば取れます。

家なら、壁が汚れても最悪「あーあ」で済みますが、済まないのが「店舗などへの生け込み」に使用した場合です。料亭の掛け軸なんぞ汚したら、大変なことですので、基本的には使わない方が良いと思います(使えたらどんなに良いだろうと思いますけどね!)。

実際の作例 ※完成作品ではありません

私も、現実をシビアに見つめるおなごの1人なので、ヨツドメのプチプチはありがたくありません。
しかし、それと同時に、「あのプチプチを、思う存分プチプチしたい」という思いを、ずっと密かに抱いておりました。そして、このほどその欲望を、思いっきり満たしてしまいました。
30年の思いを込めた、プチプチの跡を御覧ください。(惨殺シーンみたいになってますが)


白い机と、白い器に飛び散る赤い跡。
一体何があった?!

もうちょっと引きで撮影しますが……

引いてもあんまりわかんない……。

そして、これがその全貌だ!

白い器の中で、40分ほどもただただ赤い実をプチプチやった結果です。
なんと、草月流家元研究科での習作。
あたりの汚れっぷりも含めて、「よろしい」を貰ったよ! 汚れ放題の未完成作品を評価してくる草月ってすげえな。

プチプチやっている最中に、人の反応が、大きくニ分されるのも、面白いと思ったことの一つでした。
「あら、ジュースみたい」っていう人と、
「うわあ、血の池地獄」っていう人の二派に分かれましたね。

作者としては、どっちを目指したわけでもなく、忌み嫌っているプチプチと赤い汁に今日は付き合ってみよう、と思っていただけです。
でも、今しみじみと画像を見たら、赤い水の散らばり方に可愛げが無いので、どっちかと言えば「血」の方向でしょうね。
さすが、草月流を代表する吸血鬼愛好家の作品です。(seiさん、もっとほかのことで流派を代表しような)

こういう「血の池地獄」を生けると、当然ながら殺人犯のような手になります。

これは、赤い実を手で握りつぶしたりしていた結果ですので、普通に枝モノとして扱っている分には、ここまでまっかっかにはなりません。でも、ちょっとは付きますのでご注意を。

私も、案の定服に赤い汁が飛び散りまして……

このような、赤い点々が、あっちこっちに付いちゃいまして、多分洗っても落ちないっぽいです。
いやもう、あれだけ握りつぶしたら「想定内」ですけどね。