自分が使った花材事典:椿
いけばな人の大好き花材、椿です。
椿にも色々ありますが、これは「やぶ椿」です。切り花で流通している椿の中では、もっとも一般的で、お値段ももっとも安いです。お稽古花にも入ってきます。
椿がいけばな人に愛される理由は、枝・葉・花のバランスの操り甲斐があるからです。
一番上の画像を見ていただければ分かるように、椿というやつは、葉っぱが結構茂っていて、悪く言うと「バサバサしている」感じです。この「バサバサ」に鋏をいれ、枝の線や、花の顔や、一枚一枚の葉の表情をいかに強調していくかに、いけばな家の腕が問われるようなところがあるんです。
なので、いけばな家としては、椿を達者に操れるようになれたらカッコいいよな、って思うわけです。
実際に、いわゆる「いけばなの名手」と言われている人たちに、椿を好む人が多いこともあって、いけばな人には、椿に特別な思いを持っている人が多いです。
難しいんですけどね。椿をうまく生けるのって。だから、「ようし、椿やってやろう」と思って生け始めても、満足できずに玉砕したりするんですけど、それでも愛されるところが、この花材が大きな魅力を持っていることの証なのでしょう。
椿の枝にメリハリをつけようと思ったら、葉っぱや枝を相当整理しないといけません。そうしないと、「収拾のつかないバサバサ」から抜け出せないことが多いです。素人の人が見たら、「そんなに切って捨てちゃうの? もったいない」と思うほど、鋏を入れていきます。
一番上の画像の「バサバサ」から、私は下の画像のような枝を切り出しました。
↑このくらいのさばき方は、別に思い切ったものでもなく、「結構、普通」です。
あ、この一本の枝以外は捨てちゃうということじゃないですよ。ほかにも、何本か切り出していますし、葉っぱだけの枝を温存したりもしてます。
葉っぱだけの枝というと、こういうのなんですけど……
椿の葉っぱの面って、結構大きくて、しかも平面的に並ぶんです。
この、「平面的」というのが曲者でして、いい感じの茂りや隠しになるかと思えば、面白みの無い「ベターっとした面」にもなります。
これもやはり、操り手の技量がものを言ってきます。
要するに、椿というやつは、多様な選択肢を内包していて、「あんた、何がしたいわけ? 一番やりたいことを選べばいいけど、選べるの? 選ぶ覚悟あるの?」と問うてくるのですな。
椿の問いに、余裕でお答えすることができるのが、カッコイイいけばな家なのだと思います。
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