スズバラの実生
画像の赤い実は、いけばなの世界で「秋の実物」として人気のある花材の一つ、スズバラというものです。
いけばな以外でも、フラワーアレンジメントとか、ウインドーディスプレイの花材などによく使われるので、見たことのある人は結構多いはずなんですけど、なぜか世間的な認知度は非常に低く、スズバラという名前だけ聞いて、「ああ、あれね」と分かる人はまず居ません。
スズバラは、普通は実だけになって、葉っぱも花も付いていない状態で入荷します。
なので、枝のたちと実の姿しか見ることができないのですが、切花スズバラの枝を見る限りでは、半蔓みたいな樹形だな、ということが分かります。そして、気前良く実を付けるところから、「多分、原種に近いっぽい」ということも、何となく推測されます。
私は、いけばなに使ったスズバラの実から、二年にわたって種を取っては種まきしてみました。
「二年にわたった」理由は、最初の年には発芽しなかったという悔しい事実があるからなのですが、現在は、全部で4株のスズバラがわが家で育っています。
この記事では、最初の年の、失敗の記録を含めて、スズバラの実生のガーデニングについて紹介してみようと思います。
最初のチャレンジで使ったスズバラ
下の画像は、2010年の秋に使ったスズバラの実です。色がきれいで、秋らしい花材ですよね。
確か、自分が生けたのではなくて、稽古場のゴミ箱の中から拾ってきたように記憶しています……。
この実を、少し期間をおいて、ちょっと乾いてきたところで種まきしました。時間を置いた理由は、「もうちょっと熟させたほうが良いのかな?」と思ったからなのですが、後で知ったところによれば、ここまで赤くなったバラの実であれば、すぐに種を出しても問題なかったようです。
↓ちょっとシワシワになってます。
種を、割ってみると、中はこんな感じでした。
この種を取り出して、ジフィーカップにまいたのですが、発芽の一番大切なタイミングと、マンションの大規模修繕のスタートが重なり、日照が極端に少ない場所へ移動しなければならず、もやしみたいな芽が1個出たものの、それを丈夫な芽に育てることができず、無念にも枯らしてしまいました。
二年目のチャレンジに使ったスズバラ
一年目のチャレンジで、失敗はしたものの、「十分、発芽させることはできる」と思ったので、次の年にもスズバラの実をゲットしてまいてみました。
↓そのときに使った実の画像です。
見た目は、一年目のスズバラの種とほとんど変わりません。一年目の種も、発芽自体はできたので(マンションの修繕工事で育たなかっただけで)、この種もきっと悪くない種だろうと思いました。
↓手のひらの上に出してみました。
とても粒の揃った種でした。ほかの実の中の種も、みんな優等生的な種でして、この中から良い種を選りだすのは難しかったのですが、それでも、なるべく良さそうに見える種を選んでまきました。
翌年の春に、ワラワラとスズバラの芽が出てきました
良さそうな種がたっぷりあったおかげで、年が明けてから、スズバラはワラワラと発芽してきました。
↓この画像は、芽が二つばかりでてきたときのものです。
最初に発芽を確認した日付の情報を削除してしまいまして、いつ頃だったか思い出せません。3月上旬だったかな……。何でも、「ノバラよりは相当早く出てきた」と思ったことを覚えています。
↓もう少し日にちがたって、かなり発芽してきた様子です。
この時点で、「なんだか変わった色の芽だ」と思っていました。なんだか、紫っぽいというか、グレイパープルというか、独特の色をしています。この色も、「大分ノバラと違うなあ」と思った点です。
観察したところ、最初は「緑」で出てきた双葉が、紫がかった本葉が出てくるのと同時に、「じゃあ私も」という感じで紫化していくようでした。
↑結構たくさん発芽しました。とても良い発芽率です。こういうのは嬉しいんですけど、私は間引くのが好きじゃないので、「いっそ、最初から2~3本しかなければいいのに」とか思います。
5月末に、スズバラを移植しました
上の項の画像を見ていただくと分かるように、スズバラの芽は妙に紫っぽい色をしていました。
少し育ってきてからも、なにやら普通の「グリーン」とは違う紫っぽさとグレイっぽさを含んでおり、私は「個性的な風貌に育つのではないか」と予想しました。
温かくなって、芽が少し成長してくるにつれてどんどん間引いていき、3株にまで絞り込みました。そして、5月30日に、プランターに移植しました。
↑なんとな~く、芽がグレイパープルっぽいです。
↓真ん中の株に、ぐぐっと寄ってみましょう。
私は、この色と葉脈の様子を、「絵に描いたみたいな姿だな」と思っていました。なんか、人間が絵の具を混ぜ合わせて作った色のように感じていたのです。それほど、今まで私が育てたバラの中でも変わった葉の色でした。
スズバラがべト病でヘロヘロに……
プランターで1ヶ月ほど育て、6月中に1株ずつスリット鉢に移植しました。
で、大きな鉢に移って、のびのびと育ってもらおうと思っていたというのに、なぜか急に葉っぱの様子がおかしくなりました。
↓葉の色も、形も、健康な状態ではありません。
三株とも、急にこのような状態になったので、「なんだなんだ」と思って焦りましたが、どうやらべト病にかかってしまったようでした(うちのバラで、べト病が出たのは初めてです)。別の実生バラも、同時期に同じくべト病になったので、要するに菌がうちのベランダに来ちゃったということなのでしょうか。
↓見る見るうちに、葉っぱが変色するようになり、下の方の葉は落としてしまいました。
↑なんとも言えない情けない姿です。
出てくる葉っぱが、次々とべト病で変色していったので、私は正直「全滅の危機」さえ感じました。
べト病というのは、下の画像のように、葉脈に沿って黒いシミのようなものが広がるのです。
うどん粉病や黒点病と同様に、うっかりすると葉っぱが全部ダメになる可能性があるので、べト病は軽く見て良いものではありません。
しかし、うちでは、スプレー剤だけで、なんとかべト病を乗り切ることができました。「乗り切った」というのは、一回の散布で済んだということではなく、限りなく再発しては、そのたびに散布して直したという意味でして、私は「なんか、弱いバラなのかなあ」と思って、少しがっかりしたのでした。
そして、不思議なことが一つあって、芽が出たばかりの頃や、プランターに移植した頃には、ひと目で分かる特徴であった、「グレイパープルみたいな色味を感じる葉色」が、スリット鉢に移してからは、姿を消してしまいました。現在もそうなのですが、普通に緑色の葉っぱです。
でも、スズバラをバラの図鑑で調べたりすると、「特徴的な暗い色味の葉色」と書いてあり、その色の写真も載っているので、うちの子だけは、なんで普通の緑のなっちゃったのかなあと思います。なにか、環境によるのでしょうか? それとも、もう少し大きくなって、株として安定してくると、再びあの色はかえって来るのでしょうか?
ベト病を乗り切ったスズバラ
↑では、ベト病でヘロヘロの画像をお目にかけましたが、9月頃になってきたら、「ベト病が出ては治り、出ては治りの繰り返し」という状況からは脱することができるようになりました(でも、たまに思い出したように出るんだけど)。
しかし、ベト病の爪あとは株にしっかりと現れていて、下のようなヒョロヒョロな有様でした。
二株あるうちの、二株ともヒョロヒョロです。元来がスマートな樹形ではあると思うのですが、株の下半分にまったく葉が無いので、なんとも言えぬ貧相さです。
救いは、株元からシュートが出てきていることで、これから充実した株に育ってくれると嬉しいのですが……どうなりますことやら。
スズバラは、誘引して蔓仕立てにすることもできるし、刈り込んで自立させることもできるそうなので、基本的には蔓にはしないで木立の樹形にしていこうと思っています。もしも、トレリスか何かに誘引したほうがカッコ良さそうだと思ったら、とりあえず一鉢を蔓仕様にしてみることはあるかもしれません。
スズバラのトゲ
スズバラは、株が小さかった頃には、全体的に超トゲトゲしいやつでした。
↓こんな感じでした。
しかし、ある程度育った地点から、突然にトゲが少なくなりました。つまり、株の下半分は、画像のようなトゲトゲで、上半分は、ほぼトゲなしです。二つある株が、両方そうなので、「こういうものなのかなあ」と思っています。
トゲが無いほうが、作業するには助かりますけど、たまに「トゲも魅力的だ」と思うバラがあるものですよね。うちの、こちらのバラがそのようになりつつあります→謎の原種系バラ
ここから先の、スズバラの成長も、このブログで記録していきます。
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