自分が使った花材事典:タニワタリ

2019年3月31日

タニワタリは、いけばな家が大好きな葉物です。


濃い、美しいグリーン。幅があって、強さの出せる葉面。和洋のどちらにもなじみ、大作にも小品にも使える守備範囲の広さ。手軽な加工もでき、素人にも玄人にも、「これは便利」と思わせてくれる花材です。

一本だけの画像も貼っておきましょう。

↓これ、葉っぱの表側です。これで、「何の種類の植物か」が大体分かります。

↓葉の裏面の方が、さらに分かり易いです。

知っている人には当たり前のことですけど、タニワタリは大きく言うとシダの仲間になります。シダって、「じめじめしてキモチワルイ植物」と嫌う人もいますけど、花材としては優秀なものが多いです。

タニワタリは、葉っぱのフチにフリルがあります。

この「ヒラヒラ」を、葉っぱを何枚も重ねることで強調するという手法を、いけばな家はよく使います。
↓こういうことですね。

↓タニワタリを、ただ花瓶に放り込むと、このくらいの線を描きますが……

↓手で癖付けすると……

↓このくらいまで下に落とすこともできます。

ことのついでに、「かる~い感じでできるタニワタリの加工方法」をいくつか紹介してみることにしましょう。
まずは、うちのサイトでは、あまり推奨しているとも言えないホチキスの使用例から出してみます。

ホチキスとは、ズバリこれを使います。

生花用ホチキスみたいなものは無く、普通の文房具のホチキスを使います。
私は、生花の扱いでホチキスを使うというのは、あまり威張ってすることではないと思いますが、「毛嫌い派」でもありません。ホチキスさえ使えばやりたいことが実現できるというなら、使っちゃえばいいと思います。
しかし、「毛嫌い派」の見識も立派だと思いますし、ホチキスみたいなものを使うと、どんどん安易な方向へ流れていくタイプの人は、使わない方が賢明だと思います。

まあ、ホチキス談義はこのくらいにして、使用例を出してみましょう。

植物をホチキスで留める方法は、紙を留める方法となんら変わりません。
挟んで、カチッとプッシュ。それだけです。

フラワーアレンジメント的な例を出すなら、二枚の葉っぱでこんな風に「緑のハート」とかできますね。
↓ ↓ ↓

ただ、これだとホチキス針が見え見えなので、いけばな的には嫌われます。
……ということを書いていて、今思い出したのですが、何かのいけばな展で、ホチキス留めの針が見えてるんだけど、カラー針を使っていて、しかも、その針をたくさん打って留め、「針が見えちゃってる」のではなくて、「ホチキス針さえも、見所にしてます」というタイプの作品がありました。つまり、「舞台裏が丸見え」ということにならなければ、針は必ずしも隠す必要はありません。(針が見えててかっこいい、というのは、正直なかなか無いですけど)

でも、針を隠すのは、そんなに困難なことではないので、ちょちょいのちょいで隠しちゃったほうが私は楽です。
たとえば、上の「緑のハート」の葉っぱをちょっとひねくるだけで、針など簡単に見えなくなります。

↓こんな風にしてしまえば、針は見えません。

ハートじゃなくなりましたけどね。でも、新たな動きと形ができたので、ここから作品に仕上げていくことはいくらでもできます。

もう一つ、これまた私のあまり好きじゃない加工法を紹介します。

↓葉の一部を切り取る、という方法です。

この方法は、鋏一つでできるので、初心者の人でも簡単にトライできます。
葉の、強い面の一部を抜くことで、印象を軽くしたり、切り取り方でリズムをつけたり、色々な表現に使えるのですが……どーーも私は好きではありません。なんか、「ちょっと不自然すぎないかい?」と思ってしまうんですね……。でも、こういう加工は使いようなので、「良く使えばオールOK」なのだと思います。

タニワタリが、上の画像のように、かなり大胆な「歯抜け」状態にしても直立していられるのは、葉の真ん中に走る芯が固いからです。

大体、「高くて良い品物」ほど、芯がカチカチだと思っていいです。

「加工」って言うほどではないですが、もう一つ使い方の例として、長い素材をあえて丸めちゃう、という使い方もありますね。
↓たとえば、こんな風に、器の口につめてみたりとか……

もっともっとぐるぐる巻きにしていくと、また違った表情が出てきます。

このように、多様な表情が作れる可能性を大きく感じる花材に、いけばな家は惹かれていくものなのでしょう。