自分が使った花材事典:タカノハススキ

2016年6月5日

タカノハススキは、タカバススキと呼ぶ人もいます。


「タカノハ」とは、「鷹の羽」のことでして、葉っぱに縞々の模様があるのが、「鷹の羽根みたいだ」というところからのネーミングです。

タカノハって、自然な模様なんでしょうかね?

人間が品種改良して作った模様なのかな。

このように、見事な縞々模様。

この縞々が、きれいなんです。

私は、花屋で働き始めたときから、お金を出してススキを買うなら、タカノハに限ると思っています。
タカノハじゃない、普通の緑の葉っぱのススキも花屋で扱いますが、花屋で仕入れるススキとその辺に生えているススキを比べても、「市場で流通しているススキの方が、品物としては上」だと思ったことが無いのです。
近所の空き地に生えているススキと、品物としては同等で、むしろ輸送された分だけ新鮮さを失っているものに、私はお金を払いたくありません。だって、もっと良いものがタダで入手できるんですから。私、すごくいいススキの生えてる駐車場が、近所にあるんですもん。
でも、タカノハだったら、お金を出して買う価値があると思います。近所の駐車場には、タカノハは無いのですから。

切りたてのススキは、水揚げも良いです。「良い」と言ったところで、普通の切花と比べたら良くないんですけどね。ススキは、水揚げが悪い植物の代表格ですから。
あまり水を飲んでくれないススキは、一日くらいも経つと葉っぱは巻いてきますし、穂は開いてきます。

入手したススキに、キレイじゃない葉があったら、切ってしまった方が良いです。青々した葉の中に、2~3本も枯れかけた色があったら、それだけで全体が枯れているような印象を与えてしまいます。
しかし、ススキの状態によっては、良くない葉っぱを整理すると、ほとんど葉っぱが無くなってしまうこともあります。また、生け方により、「少しでも葉っぱの数を減らしたくない」というようなこともあります。
そんなときは、傷んだ葉っぱを丸ごと取らないで、傷んだ部分のみをカットします。要するに、茶色く巻いちゃった葉先をカットしてしまうわけです。(いけばな流派によっては、葉先カットをタブーとしているところもありますが、そういうものはあくまでも「その流の決まりごと」ですので、他流や一般の素人さんが「しちゃいけないんだわ」と思う必要はありません。ただし、花屋の人は要注意だよ! 品物の葉先カットをしてしまうと、「葉先カットNG流」の先生は買ってくれないばかりかバカにしてくるぞ!)

葉先カットとは、要するに下の画像のようなことです。

↓ 葉先があまりきれいじゃないで~す

(カットNGの流派というのは、「こういうのも自然の風情じゃないですか」っていう考え方なんだと思います)

↓ 傷んだところを除くように、葉に斜めに鋏を入れる

↓ こんな風にカット。

たしかに、不自然には違いない。

↓ でも、飾ってしまえばほぼわかんない。

ススキは、葉っぱも穂もちゃんと水を吸い上げてピン!としていてくれるのは、2~3日程度のものです。水揚げをいい加減にすると、半日くらいで乾いてしまうこともあります。
葉っぱは乾いたらそれでおしまいですけど、穂は乾燥してもドライ花材にすることができます。

↓ これ、水が揚がってお元気ご陽気な状態のススキの穂。

上の穂が乾いたものがこれ。開いてぽわぽわです。
↓ ↓ ↓

ドライフラワーというものは、意外に好き嫌いが分かれるものです。ローダンセのドライでさえ、嫌いな人から見たら良いものじゃないのです。私も、個人的に「薔薇のドライなんて、とんでもなく違和感がある物体だ」と思っています。
しかし、ススキのドライに「違和感がある」人は、ほぼいないと思います。
だって、その辺の空き地で風に吹かれているススキの穂は、ほとんどが乾いている状態ですからね。普通の人が、今までの人生の中で目にしてきたススキの穂は、大概「乾いた穂」のはずです。それを、今更「違和感ある」とは感じようがありません。
これほど人の目になじんだドライ花材って、少ないんじゃないでしょうか。

ただし、馴染みすぎているがために難点もあって、「その辺にあるようなものを、わざわざ家で作って生けなくてもいいか」という思想が生まれる率が高いんですけど……でも、低コストで、大量のポワポワな素材を使う必要ができたときなどには(水無しの大作とか)、候補に上げていい花材だと思います。