「音」のはなし

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※旧ブログの記事です

うちから、歩いて1分のところにあるスーパーは、なぜだか知らないが、私が子供の頃に流行っていたような歌謡曲ばかり流している。いかに下町でも、1980年代の曲は、ちょっとどうかと思う。
そして、店主の趣味なのかどうなのか知らないが、特売の日は、朝から晩まで「ロッキーのテーマ」をエンドレスでかけまくる。
あの曲を聴くと、下町のお母さんたちは「出陣!」と思うのだろうか。
確かに、精神を高揚させるBGMなんだろうなあとは思うが、この曲を一日中聞いて、店員さんたちが相当疲れるんじゃないかと心配してしまう。

私はサービス業をしてきた関係で、音のある職場にいることが多い。
長年BGMありの仕事をしていると、音によって人間がどう左右されるかが、だんだん分かってくる。

まず、チャカチャカチャカチャカする曲は、ずーっと聞いていると非常に疲れる。なにも、昨今の騒々しい曲は疲れるわね、というのではなく、ビバルディの「春」なんかも、この中に含まれるのだ。
なので、「春」を展覧会のBGMに選ばれると、かなりつらい。
展覧会に、お客さんとして見に来た程度では、それほど疲れることも無いだろうが、主催者側として終日これを聞き続けると、帰る頃にはクタクタである。

ベートーベンなども、それだけ一日中聞いたことは無いけれど、かなりヘビー級な「お疲れ楽曲」だと思う。彼の音楽は、ぐわーっと激しくなったりするから、人間の精神がそれに引きずられて疲労するのである。

結局、人が疲労しない音というのは、穏やかで、色んな意味で「振れ幅の少ない音」なのである。こういうことが分かっている人がBGMを選んでくれると、本当に助かる。

花屋さんや、展覧会の下準備の際に、「音」があった方が作業がうまくいくことがある。
「単純作業を延々続けるとき」とか「妙に静かな場所での作業」とか「急ぎなのに間に合わないかもしれないとき」などがそれである。
音をうまく選ぶと、人の意気が落ちかけているのを、引っ張り上げてくれるときがあるのだ。それが集団心理になったときなど、10人で二日がかり、などと計算していた仕事が、意外にも一日で済んでしまったりする。
さらに、スピードのことに限って言うと、BGMのテンポと、人間の手が動くテンポは、ほぼ完全に比例すると言っていいだろう。
早い音楽をかけると、作業は覿面に早く終わる。
ただし、ある時間を越える長い作業をすると、人を入れ替えないと、テンポを維持し続けることは難しい。「ある時間」とは、大体、7~8時間くらいである。そして、上のような「音で無理やりテンポアップした現場」にいると、仕事を終えた後がグタグタに疲れる。

と、いうことを、私はジュディ・ガーランドのCDをかけながら書いている。
音楽のまったく分からない人(私のことです)にも「この人うまいんだろうねえ」と思わせるジュディは偉大である。
そして、ジュディの歌も、私にとっては疲れるタイプの音である。どうも、魂で歌ってらっしゃるらしき気配がするので(アステアのダンスと同じ気配だ)、礼儀として、こっちも寝そべってはいられないからである。

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コメント

  1. かおり より:

    個人的にはやる気を出して作業する時とゆったり時間を過ごしたい時と曲を変えますねえ。楽しんで歌ってる気がする人の曲を聞くと眠たくなる気がするけど、それは気のせいかなあ。

    • sei より:

      うちには、映画音楽のCDしか無く、しかも9割はミュージカルなので、なかなか眠くなれる曲はありません。オペラとか、バレエ曲も眠れませんね。曲自体に、ドラマを含みすぎているのでしょうね。
      実は、うちで一人でいるときに私がCDをかけるのは、ほとんどアイロンをかけるときなんですよ。
      アイロンかけ、大嫌いなので、音で気を紛らわさないと駄目なんです。