自分が使った花材事典:カイワレダイコン

2016年3月5日

生けるために買ったのではなく、食べるために買ったものですが……

見ての通りのカイワレダイコンです。隣のスーパーで、たしか30円だったかな。

上にも書いたとおり、買うときには、完全に「食材」として買いました。でも、うちのお弟子さんの前で、ちょっと生けて見せたりしたので、一応「花材事典」に入れておこうと思いまして。(最終的に、ちゃんと食いました)

なんで、うちの稽古場で生けることになったかというと、「展覧会に出てくるカイワレ作品」の話をしたりしたからです。
そーなんです。いけばなの展覧会に、カイワレダイコンを使った作品が出てくるのは、そう珍しいことではありません。嘘だと思ったら、いけばな展をチェックしているような人(出品経験は無くてもよし)に、聞いてごらんになるといいです。カイワレで出品するのは、すでに「変わったことをしている作品」ですらありません。「定番花材」とは言いませんが、「見かけることはある」くらいの材料です。

カイワレが、いけばな展に進出したのは、やはり草月流の前家元、勅使河原宏氏の作った「野菜時代」が大きなきっかけでしょう。「野菜時代」には、草月展には、「八百屋ですか」っていうくらい、野菜作品が並びました。今思い出せるだけでも、

  • とうがん
  • カボチャ
  • ダイコン
  • にんじん
  • ゴボウ
  • ピーマン
  • たまねぎ
  • アスパラ

↑この程度は出てきます。当時の草月誌など見れば、もっと出てきます。私も、草月展初出品のときには、たまねぎを使っています。そういう時代に、カイワレも出てきたわけですが、パックを大量に買い、双葉の大群を作るような使い方がよくされました。白い軸の部分もきれいですので、カイワレというやつは、意外に見せ場が作れるんです。
また、カイワレは種の入手も簡単ですし、それを発芽させるのも簡単、発芽のタイミングを展覧会にあわせるのも簡単ときているので、ひょこひょこと芽を出す面白さを見せる作品もありましたね。

すごく現実的なことを言いますと、上にも「30円」と書いたように、カイワレはコストが安いです。100パック買っても3,000円で済むわけです。カイワレ100パック分の植物を、一般的な葉物でそろえようとすると、何倍のコストがかかるか分かりません。そういう意味でも、展覧会用の大型作品にするときに、導入し易い花材なんです。

私は、やはりカイワレは双葉のかわいげが好きかな……。

お弟子さんの前で生けて見せたのは、後で食うつもりだったので、菜の花と取り合わせ、グラスに生けて、「野菜づくし・キッチンシリーズ」にしてしまいました。そうやって、「食えるものと、食える道具立て」にしてしまうと、いけばなとしてカッコイイ作品にするのはちょっと難しいです。食い気の印象が大きすぎるので。
だから画像も残さなかったんですけど……ほかの花材とあわせて、普通の花器に入れちゃったら、なんか食べるのイヤになりません? 生けるつもりで買ってきたものには、どんなことでもできますが、食うつもりのものに無茶をさせるのは、どうも勿体無くてできません。