自分が使った花材事典:樅の木

2019年4月23日

樅の木というだけで、去年の暮れの画像を今頃出していることがバレバレになってしまいます。


この樅の木は、暮れにいけばなのお稽古に入ってきたものです。暮れ以外に樅の木を入荷する花屋さんはほぼ無いです。常緑樹なので、本当は、一年中切って大丈夫なはずですが、まあほかの季節には使いにくいですよね。値段が安いならまだしも、そうではないのですから。

こんなに大量に入っていました。

これで、いくらだと思います? びっくりしますよ。
なんと、オドロキの600円! なんて優秀な花屋さんなんだろう。
これだけ量があれば、3,000円くらい取られても仕方ないところです。

この樅の木は、いけばな花材なので、いけばな作品にすることだけ考えて買えばいいはずのものです。しかし、私は持って帰ってリースにしようと思っているので、買うときには枝先が暴れていない、リースパーツにしやすいものを選びました。


手のひらのように、ぱっときれいに広がったところが、部品としては扱いやすいです。

樅の木は、ヒバとか杉みたいに、葉がペタッとしていないので、切り分けてパーツにしてもボリューム感があります。

枝先の部分を、横から見ると良く分かると思います。

↑このように、モリモリした感じがあるので、存在感が大きいのです。

しかし、「良いリースパーツが取れる樅の木」というのは、本当は「いけばなには生け難い樅の木」なのです。だって、平面的だということですからね。
ボリュームのある枝が平面的だと、べたーっとして扱いに困ります。
枝に色気のある曲線でもあればまた話は違うのですが、樅の木は、子どもが絵に描くような「単純に直線に枝分かれ構造」なので、鋏を入れて個性を出していく作戦も難しいです。

そして、裏表があまりにもハッキリしているんですよね~。
横から見ると、葉の表側へ、表側へと枝のパワーが向いているのが分かります。

↓こんな感じですかね。赤い矢印の方向にばかり気を取られ、「後ろ、がら空きだよ」の状態です。

しかも、枝の裏側は、明確な「裏葉色」。

これだと、裏を見せるなら、意図を持って見せないとおかしいです。
そうでないと、「そっぽ向いちゃってる」という印象になってしまいます。

で、表を向けたら向けたでべたーっとしてるでしょ。
樅の木で「傑作だ」と言われるいけばなは、なかなか生まれ難いと思います。

それでも、いけばな家というやつは、暮れに樅の木を触ると嬉しいものなんです。その証拠に、稽古場に出ていた樅の木は、あっという間に完売してしまいました。(※私のように、リースに流用しようと思って買い込んだ人はいないだろうと思いますので、純粋にいけばな花材として完売したのです)

もう一つ、樅の木の扱いで困ることを書きましょう。
松などでもそうなのですが、ヤニが出て手がベタベタになるんですよね~。

↑赤い丸の部分が、「ヤニ付着部」です。
こういうヤニのベタベタに、ほかの花材の汚れなどが付き、最終的に手がベタベタの真っ黒けになることがあります。そういう手で、うっかり白い壁に手をついたりすると、ばっちり跡がついてしまいますので、要注意です。
このヤニは、松脂と同じ方法で取れます。