自分が使った花材事典:胡蝶蘭

2016年3月22日

久しぶりに、いけばなで胡蝶蘭を使いました。


私は、いけばな以外の業務では、普段から胡蝶蘭を使うことがあります。しかし、いけばなのお稽古に出てくる胡蝶蘭にお目にかかれるのは、年に数回ほどです。しかも、出てきたときに、必ず選ぶわけでもないので、「お稽古花として手にする」のは、数年に1回くらいのものです。

ぶっちゃけ、私がお稽古花で胡蝶蘭を使えるのは、私の通っている稽古場が「大規模教場」だからです。私の主催する稽古場のような、お弟子さん数人程度の規模では、胡蝶蘭をつけてもらうことはあまりできないでしょうね(できるわけないと思っているので、リクエストしたこともないですけど)

一般的に、胡蝶蘭の魅力は、花の顔だと思っていいのでしょうか?

私は、胡蝶蘭は嫌いではないのです。しかし、世の中の人が、胡蝶蘭に恐れ入っている気持ちには、それほど共感はいたしかねます。(最近は、胡蝶の値段も下がったのでそうでもないですが、一昔前は、「胡蝶蘭様じゃ、頭が高い」みたいな雰囲気がありました)
私は、胡蝶蘭はきれいな花だと思うのです。でも、この花が、「高級ギフト花鉢」として、これほど突出した理由があんまり分かりません。単価が高い花だったからだろ、と言われれば、それはそうだと思うのですが、ここまで独占市場になったことがちょっと不思議なのです。

私は、胡蝶蘭は、花の顔も好きですが、「花の重なり方」も好きです。

俳優なんかもそうなのかもしれませんが、有名になりすぎた銘柄というものには、当然のように「アンチ」が生まれます。「胡蝶蘭は、なんだか好きじゃない」という人、結構多いんですよ。
私個人のことを言うと、上にも書いたように、胡蝶蘭は嫌いじゃないです。しかし、胡蝶蘭は全部好きということではなく、品物によって、気に入ったり、気に入らなかったりします。
色気のある良い品物は、「いいなあ」と思いますね。宝石のような胡蝶蘭って、あるんですよね。


じゃあ、この胡蝶蘭の「品物」はどうかと言えば、「宝石」ではないですね。
まあ、当たり前です。一本400円ですから。(だから、稽古花に入ってくるのです)しかし、切花になっていると、使いようでなんとでもなりますので、いけ手の腕で宝石にすればいいんだと思います。
なかなか宝石にはならないですけどね。胡蝶蘭は、いけばな素材としては、難しいと言えると思います。

「宝石」ではない胡蝶蘭は、よくよく見れば、顔に難があります。

分かりますか? 真ん中の花の、花弁の肌に注目。花弁が、ペチャっとなる兆候が見えています。400円で、ここまでちゃんとしていれば大サービスくらいのものですので、私はこの買い物が「悪い買い物だった」とは思いません。いけばなの稽古で胡蝶蘭を使った経験値だけでも、400円分くらいの価値はあるでしょう。(勝負しなければならない本番で、高級花材に力負けすることはいくらでもあります! 経験値は大事)
しかし、私は余計な高級蘭鉢を見慣れているので(100万超えもあります)、余計なものが見えちゃったりしてしまいます。

胡蝶蘭の花は、本来は下垂して咲くものです。
でも、いけばなでは、このように立てて使うことがよくあります。

立てたほうが、ニュアンスのある表情が出ていけやすいことも、よくあります。

いけばな畑の人はあまり気にしませんが、私は花屋業務で、胡蝶蘭の配達をすることがあるので、この花がどんなにダメージに弱いか知っています。
人とすれ違うときに、その人の肘があたったり、狭い通用門みたいなところを通るときに、両サイドの花がこすれたりすると、後から花のキズが浮き彫りになってきます。
10万を超える鉢になると、一ヶ所キズがあってもかっこ悪いので、ワゴンに乗せて運ぶようなときには、本当に神経を使います。
日常的にそういうことをしているので、私は、胡蝶蘭の傷に対しては非常にキビシメです。

↓この花、右側にキズがついてしまいました。

これは、私には「切り落とさないと変」な花ですので、切っちゃいましたけど、素人の方は、こんなことをしなくても良いです。
このくらいの傷、ちょっと向こうを向ければ分かりません!
しかも、一本まま飾れば、ほかの花の陰になったりもするので、全然目立ちません!
私のは、職業病です。良い子は真似しないでください。