自分が使った花材事典:夏みかんのトゲ(ナチュラル・着色)

2020年6月17日

※生の枝を取っておくとそのままドライになり、ドライ化しても見た目がほぼ変わらないので、花材事典カテゴリとストック花材カテゴリの両方に入れています

フレッシュな夏みかんのトゲ

普通、この季節に「夏みかんの枝」とくれば、「たわわに実の付いた枝」と思うでしょうが、下の画像のようなトゲトゲです。

夏みかんのトゲ

夏みかんじゃないでしょ、カラタチでしょって、思いません?
でもこれ、夏みかんなんです。普通、このような夏みかんの枝は、入手できないと思います。
じゃあ、どこで入手したかと言えば、うちの実家からなんです。

うちには、30年ほど前に、私と兄貴が種から植えた夏みかんがあります。全盛期は、困るほどたくさんの実をつけたものですが、すでに老木になり、実の数は今では少なくなりました。

その夏みかんの、「メインの枝の脇から出てくる細いシュート」が、画像のようなトゲトゲの枝なんです。多分、こういう「細いシュート」などというものは、ちゃんとした生産者ならば、早い段階で処理してしまうものなのだと思います。つまり、うちの実家のような、「適当な管理しかしない素人」の家でしか取れない素材になります。
こういうものを、面白く使えるといいなと思います。

特に長い枝が2本。作品にするなら、このあたりがメインになるはずです。

夏みかんのトゲ

私は、この素材は、完全に展覧会用と思って調達してきました。こんなキケンなトゲトゲ、家の中とか、店舗生け込みでは使いたい気持ちにはなりません。
ただ、そんなに近い未来に展覧会が無いので、いざ発表のときには、素材が現在のような緑色を保っていることは無いと思いますけど、茶色になってもおかしいことは無いので大丈夫ですし、何なら着色してしまうのもアリです。カラタチなんて、ほとんど着色か漂白ですものね。(私、一回だけ緑のカラタチ使ったことがありました。実によかったです)

上の2本以外は、比較的短い枝です。

↓この枝が一番小さいんですが、それでもトゲが長いので、結構な存在感です。

プロが作ったのではない素材というのは、弱点がいろいろあります。
たとえば、下の枝のような曲り具合は、あまり良い育ち方でなかったことが丸分かりです。

しかし、上の「曲り」のような部分こそ、作品に生かせれば面白いものになります。うまく生かせなかった場合は、簡単に「ただのきれいじゃない枝」に転落しますので、怖い素材でもありますが。

↓このような部分も、素人生産ならではのものですね。

変なまだらが出ちゃってます。これはどう処理しようかなあ……。

あと、「どうしようかなあ」と思うのは、展覧会場に持ち込むときの、「輸送をどうしようかなあ」という大問題があります。
この枝、とにかくトゲがものすごいのです。もちろん、その面白さに惹かれてゲットしたのですが、みかんのトゲも、ここまで大きく鋭くなると、ちょっとした凶器です。シートや新聞紙ではどうにもならないので、やはり箱詰めにするしかないのかな……(すごい面倒なんだけど)。

【追記】このような方法で、輸送の問題は解決しました→トゲトゲのいけばな材料を輸送する方法

あまりにも立派なトゲは、なんと爪楊枝よりも太くて長く、鋭いです。

柑橘系の樹木って面白くて、幼木の頃からトゲはあるんですけど、そのトゲは樹木の大きさに正比例して大きくなるのです。つまり、小さい木には小さなトゲが、大きい木には大きなトゲができ、樹木が大きくなり続けている間は、トゲの大きさも「ここで撃ち止め」という上限がありません。みかんの大木というものは、五寸釘みたいなトゲがビュンビュンはえていて、登って切り出すときには、とってもキケンな思いをします。
で、そのように巨大になったトゲは、細いシュートにも分け隔てなく発生するのですね。だから、私の取ってきた枝は、細さに見合わない、やけに立派なトゲをつけているわけです。

枝の細さに対して、このすさまじいトゲトゲぐあいが面白いのが、この素材の特徴ですので、その部分を生かす使い方を考えたいです。

追記:着色した夏みかんのトゲ(ドライ)

上の項の「フレッシュな夏みかんのトゲ」を、のちに乾いてから白に着色しました。
(枝が白なので、グレイのバックで撮っています)

夏みかんのトゲ(ドライ)

白いスプレー塗料を吹き付け、ムラができたところは一部アクリル絵の具で塗った部分もあります。
私は不器用人間なのですが、このくらいの着色はなんとかできます。

この、白く着色した夏みかんのトゲは、展覧会作品として日の目を見ています→草月流東京北支部展