自分が使った花材事典:ギガンジウム

2018年11月11日

ギガンジウムは、市販の花材事典の類を見ると、「アリウム・ギガンジウム」になっていますが、現場で「アリウム・ギガンジウム取ってちょうだい」「今日のアリウム・ギガンジウムは品物が良いね」などと言っている人は誰もいません。「ギガンジウム」か、いっそのこと「ギガン」と呼ぶのが普通です。

まん丸な形と、印象的な色で、なかなか力のあるポイントになる花材です。よって、展覧会などで、重宝されることが多いですね。
ギガンは、見た目と、名前に「アリウム」と付くところから、分かる人には分かるでしょうが、要するに葱坊主の仲間です。葱坊主の親分みたいな感じですかね。
茎も、長いものは1m近くあるので、大きさを出すのにも役立ちます。
扱うときに、切り口から赤い樹液が出て、服に着くと金輪際落ちないので、良い服を着てお稽古に行く人は注意しましょう。
たまたま、切り口の赤くなっているところが、画像の隅に写り込んでいるものがありましたので、ピンボケですけど無理やりアップしてみます。

↑ね、結構冴えた赤でしょ? これ、天然の樹液なんですよ。
この樹液が、器の中の水にも溶け出すので、ギガンをいけた水は、しばらくすると薄赤く染まってしまいます。なので、透明なガラスに生けるには、ちょっと考え物です。

実際に、このくらい染まっちゃうという画像を撮ってみました。
↓左が、しばらくギガンを入れておいた水です。

樹液の色には個体差があるので、もっと濃く染まってしまうこともあると思います。
上の画像を見て、

「赤くなるならなるで、それを効果的に生けたらどうだろう」

と思う人が絶対にいると思います。私も、若い頃に一度そう思ったことがありました。
しかし、一度やってみれば分かりますが、ギガンの樹液の赤は、半日くらいもたつと、妙に汚い赤になっていくんです。なんか、どう表現したらいいかわかりませんが、錆びみたいな、嫌な赤になります。なので、「赤い樹液を見せる」という戦法は使えません。

もう一つ、ギガンの豆知識を書いておきます。
てゆーか、いけばなやってる人なら、ほとんどの人が知っていると思いますが、「ギガンの禿げをなおす方法」というのがあるんですよね。
まず、「ギガンの禿げ」から説明しますと、下の画像のように、ギガンの花同士がくっついていたり、ギガンが箱とか包装紙に強く押し付けられていたりすると、圧で花が凹んで、禿げちゃったみたいな部分ができることがあるのです。

↑のような状態から、花を離すと、↓のようになります。


花の真ん中が、空いちゃってますよね。これを、「ギガンの禿げ」と言います。
要するに、下の画像の、ピンクで囲んだ部分です。

これを、禿げたまんまではかっこ悪いので、元に戻す方法として、ギガンの茎を両手で挟んでクルクル回すんです。そうすると、遠心力で、「禿げ」が直ります。
回す画像を作るのが難しかったので、「実演画像」は貼りませんが、火をおこすときに、火きり棒を両手で挟んで回すみたいな感じでクルクルやります。(あ、動画を作ればよかったのか)(でも、ギガンのためにわざわざ動画も無いな)

口の悪い某先生は、「人間の禿げも、回してみたら直るんじゃないか」などと言っていますが、皆さんはそういう悪いことを言ってはダメです。

禿げトークはその辺にして、花材として私が「良い」と思うところを挙げると、なんといってもイマジネーションのスプリングボードとなるところだと思います。

ギガンの、あのまん丸な形を見て、ほかの花材や器とあわせて見ていると、何かが心の中に湧いてくるんですよね~。

ためしに、色んな器に、ギガンを合わせた画像を貼ってみましょう。
※ただ合わせているだけなので、すべて作品ではありません。あわせて楽しんでいるだけのものだと思って見てください。

↓丸いものが、ポコッと浮いているような、何なら外に転がり出してきそうな感じ。



↓インパクトあるのに、なんとなくオトボケ風味がある。



↓個性的な風貌のくせに、不思議と器を選ばない。

↓複数使うと、なんとなくリズム感が出ることが多い。



とかなんとか、色々なものと合わせていると、なんだかこいつは人の想像力にうったえてきて、脳内の、面白いものを探して喜ぶ回路を活性化してくれるように思うのです。

「作品じゃない画像」ばかり並べてしまったので、最後に一枚だけ、作品写真を貼っておきます。



なんか、ギガンが入ると「間が持つ」のよね。
でも、そのおかげで、とても安易に作品に持ち込むことができる花材でもあるので(アンスにも、その傾向があります)、「うまく使う」には腕を上げないといけません。